1-2-1)ストレスとうつ病動物モデル  

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 ここのコンテンツ 「双極性障害の概念、診断、治療」の1-2)病因的分類のところに,次のように書きました。 
 

「躁うつ病とうつ病を比べた時,発症の誘因が後者に多い事,動物モデルで種々のストレス(強制スイミングなど)をかけると,比較的容易にうつ病様の病態が作り出され,抗うつ薬の薬効検定などに応用可能でしたが,どのように種々のストレスをかけても,躁うつ病のような症状を持つ動物モデルは出来なかったのでした。そこでうつ病は一般にストレスで作りうるけど,躁うつ病はストレス+素因がいるとされたのでした」

しかし,動物のストレスによるうつ病モデルの具体的説明はしませんでした。この動物モデルは,人間が日常生活のストレスでうつ状態になる状況にも似ていて,参考になるので、寄り道ですが紹介します。
 
 みな,うつ病のモデルですけど,躁うつ病のうつ病相には適応できるかもしれません。
 
 紹介するモデルは,1)強制水泳(forced swimming:FS),2)学習された無気力(学習性無力,learned helplessness:LH),3)社会的負け犬(social defeat: SD)モデル,4)母子分離モデル,でした。
 
 1)は,ラットを水が入った円筒形の容器に例えば15分入れた後に,ケージに戻し24時間後再度5分間,水につけて,その間に見られる無動時間を測定するものです。ラットは水に入れると最初はもがくけど,次第に諦めて顔を水面に浮かすだけの無動状態になります。それの時間を測ります。簡便なので多くの抗うつ薬の検定に今でも使われます。わずか1日間の薬物投与で,無動時間の短縮が見られます。
 :想像を絶する激務にさらされれば,だれでもうつになります。
 
2)は,まずラットを,スキナー箱に入れて,レバーを押すことで回避可能な電気ショックを与えて,レバーを押すことを学習させます。つぎにレバーのスイッチを切って回避不能にした電気ショックを例えば80回与えます。それから24時間後,レバーのスイッチを入れて回避可能な電気ショックを与えます。テストを例えば15回行い,11回以上逃避失敗したものを学習性無力(LH)状態とします。
:困難な状況でもコントロールできれば耐えられるのに,耐えられない状況(レバーが効かない状況)に追い込まれる経験をすると、その後はもうダメです。

3)は社会的ストレスをみるものです。例えば一日10分だけ攻撃的マウスと普通マウスを同一ケージで飼い,残りの時間は互いのケージは透明な隔壁と空気穴で分かれた飼育環境で飼います。これを10日続けると,うつ病類似行動のマウスやラットができます。
 :嫌な人(上司,同僚,家族など)と同じ空間にいる、あるいは付き合うのは,かなりのストレスです。
 
4)母子分離ラット(他の動物の場合もある)では,成長後のストレス負荷に,正常飼育群より,コルチコステロン高値持続の点などでストレスに弱いことが示されています。うつ病あるいはそのストレス脆弱性の動物モデルとして,母子分離モデルが開発されました。
母子分離後,成育させ,2)学習性無力形成の有無を,正常飼育群と比較してみるといった複雑な実験系もあります。繊細な遺伝子レベルでの変化もあることが報告されています。
一方, 幼少期に虐待,ネグレクトなどを経験した人の場合も,脆弱性があって,成長後にうつ病になりやすいと報告されています。
 :小さい頃の事は良く分からないけど,脆弱性が生じる事があったのでしょうか?

参考文献1.うつ病の脳科学的研究:最近の話題 http://jams.med.or.jp/symposium/full/129006.pdf
      2.ストレスとうつ病動物モデル:医学のあゆみ 2006.12.30 v.219 p.1042

 

では、寄り道から戻って、「2)国際分類・操作的診断基準の台頭」 へ

 コンテンツ別目次は 双極性障害の概念,診断,治療 

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