双極性障害は人気がない

| | コメント(0) | トラックバック(0)

2000年までの20年間に発表された論文のうち,躁うつ病または双極性障害と題されたのは1768しかなく,統合失調症の11272,うつ病の19124と比して,著しく少ないのでした。
そのことについてGoodwin(2000) は,双極性障害を,neglected disease(無視された病気)と呼んでいます。

グーグルでの検索を改めて行なってみると,2008.10.22現在

統合失調症 OR 精神分裂病 OR 分裂病   2,590,000   100%
双極性障害 OR 躁鬱病 OR 躁うつ病    589,000     22.7%
うつ病                         4,230,000    163.3%
神経症                         956,000     36.9%
人格障害                        915,000     35.3%

グーグルで上記の検索でヒットした数を,統合失調症群を100%としたものです。
統合失調症と躁うつ病は,ニ大内因性精神病とされていたのに,酷く差をつけられています。

不人気の理由:開発されない治療薬
統合失調症の場合は,非定型抗精神病薬が多数開発され,日本でも6種類が使えるようになって,治療の向上が期待されています。
うつ病でも,SSRI 3種類,SNRI 1種類が使えるようになり,これらの一部は不安障害(パニック障害,社会不安障害,強迫性障害)にも適応があるものがあります。
しかし,双極性障害の気分安定薬の,主流は炭酸リチウムで日本ではこれの徐放剤すらありません。
ほかの保険適応のある薬は,もともと抗てんかん薬のデパケンとテグレトールです。

気分安定薬は,患者や(おそらく医師にとっても)効果の実感しにくい薬です。飲んでも直ぐには効かず,気分の安定化も自覚しにくいし,怠薬しても離脱症状もありません。結局,怠薬と何回かの手痛い悪化を経験して,ようやく飲むのを納得する薬でしょう。

一方,急激に効果を発揮する薬ほど,患者に支持され,それは睡眠薬のハルシオン,ロヒプノール,抗不安薬のデパス,ソラナックス,抗精神病薬,抗うつ薬などを,見ると明らかです。

また気分安定薬の作用機序は,抗うつ薬や,抗精神病薬,抗不安薬のセロトニン,ドパミン,GABAへの作用といった分かりやすいもの比べてはっきりしません。
リーマスは細胞内信号伝達系とか神経細胞保護作用とか言われるし,抗てんかん薬はキンドリング現象で説明されるけど,かなり仮説の域をでません。つまり,基礎の研究者も尻込みするから,この分野の新薬の開発が遅れます。

最近,非定型抗精神病薬が,日本の保険の適応外ですけど,気分安定薬作用があるのではないかと言われています。しかし元々,統合失調症の為に開発された薬であること。気分安定薬(再発予防)効果の検定が,躁病でまずそれを使い,寛解に入った患者を2群に分けて,その非定型抗精神病薬を使い続けるものと,止めた群の比較を行なって,前者の方が再発が少ないというやり方を取っているのが多いのでした。

バイアスとして,1)そもそも非定型抗精神病薬に効いた群だけを選んでいるし,2)後者が再発が多かったのは,躁病エピソードが完全に直っていなくて,地固め治療が必要だったかもしれない,などいろいろ疑問はありました。

海外ではラモトリジンを初めとする,新規の抗けいれん薬の双極性障害への適応の研究が盛んでした。
ラモトリジンは抗躁作用は弱いけど,抗うつ作用 は,リチウムかそれ以上に強いと言う事で注目を集めていました。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 双極性障害は人気がない

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://bipolar.nami-kaze.org/MT/mt-tb.cgi/82

コメントする