ラピッドサイクラー(RC)の治療:抗うつ薬は気分不安定薬か?
Editorial 論説 全部訳しました。一部意訳あります。
Treatment of Rapid-Cycling Bipolar Disorder(BP): Are Antidepressants Mood Destabilizers?
ラピッドサイクラー(RC)の治療:抗うつ薬は気分不安定薬か?
てのがありました。
最初、Destabilizerを読み間違えたけど、これは抗うつ薬は気分不安定(化)薬Mood Destabilizersとでも訳すのでしょう。
この論説は、Am J psyciatr 2008,3月号に載っています。ただでダウンロードできます。
論説の対象になった論文は下記でそれもDLできます。
http://ajp.psychiatryonline.org/cgi/content/full/165/3/300
http://ajp.psychiatryonline.org/cgi/content/full/165/3/370?ijkey=6490c19bb8dd9dda045ff4074571844f1f304cf9
著者: S. Nassir Ghaemi, M.D., M.P.H.
100年前,RCは観察されていませんでした。クレッペリンはその存在に気づかなかったか,その当時存在していませんでした。
その用語は1970年代に生み出され,リチウム反応性が悪いと言うこと,予後不良の要素と考えられました。RC患者はそうでない患者より予後が悪くて治療に対する反応が悪いです。
リチウムよりテグレトールやデパケンのような抗けいれん薬が有効というのは,誤った初期の印象でした。直接比較で抗けいれん薬はリチウムと同等でした。
RCは1970年代まで記述されていなかったから,臨床家は抗うつ薬のような向精神薬がRCを誘発したのではないか疑うようになりました。RCは医原性なのでしょうか?
抗うつ薬は一部の患者にRCの危険性を高めたり,症状を悪くするするのでしょうか?
初期の抗うつ薬とRCとの関連に関する報告は1970年代にイタリアのKukopulosとNIMHのWehrからでした。
のちの観察研究は矛盾して,結論のでないものでした。
でも,より大きな出版されたランダム化研究は,抗うつ薬を中止すると難治性のRCが改善すると言う事を示しました。
この研究は三環系抗うつ薬(TCA)とRCの関連を二重盲検,プラセボ対照試験でon-off-on-off デザインで行なわれたものですけど,出版された報告は多くの細かい面で不完全でした。
うたがいもなく,抗うつ薬がRCを誘発するという示唆は迷わせるものでした。:この発見は臨床家にBPの予後を改善する重要な手段:抗うつ薬の中止,を与えるものでした。しかしこのアプローチは,医師の精神疾患を改善する薬物を与え続け,止めないという傾向に反するものでした。
この号の雑誌で,SchneckらはSTEP-BDの新データより,BPの1/3がRCで,1年間のフォローでより多くの再発がありました。でも5%のRCしかその1年後の時期に,その診断基準を満たしませんでした,たぶんSTEP-BDの適切な治療か,自然経過によるでしょう。悪い予後の主要な予想因子は抗うつ薬の使用で,それは60%の患者に投与され,しばしば気分安定薬と併用されていました。
抗うつ薬とRCの関係に絞ると,STEP-BD研究は重要な隙間を埋めてくれます。
この研究 (N=1,742) が今までのどの研究より大きく,かつ前向き(prospective)研究である点が,今までのすべての(retrospective)研究と違っていたけど,1つだけ過去にも観察研究(prospective)がありました。
さらに,それらの研究と違って,STEP-BD研究はベースラインのうつ状態の重症度を調節しても,抗うつ薬は病気の悪い経過に関係する事を示しました。
上述の最大のRCのランダム化臨床試験(N=51)は,決定的ではないけど,抗うつ薬とRCの関連を示唆していました。
それに対し,最近のBP-IIのRCで未治療の少数(N=9)患者の研究では,citalopram(SSRI)の有効性を示していました,しかしこれはBP-IIに限られていました。 さらにこのデータは難治性の患者には適応されませんでした。
いまや,最大の前向き観察研究(STEP-BD)によって,RCと抗うつ薬の関連を確認し,これらの薬剤が全体の病気を悪化させ,より多くの気分エピソード(うつ病相を含む)をRC患者にもたらすとみられています。
批評家は利用できるランダム化臨床試験はBPの維持療法のもので,抗うつ薬によりRC率が上がるというという事を意味するものではないと示唆するでしょう。
前に長文で討論されているように,これらのトライアルは主に非RCで施行されたもので,プラセボと比較した場合の,抗うつ薬による気分エピソードの長期観察の悪化を検出する力はないでしょう。
未来には,困難で,倫理的にも問題だけど,RCが抗うつ薬で悪化するかいなかの仮説を検証するランダム化臨床試験を設定できるかもしれないでしょう。
その前には,STEP-BDのような観察分析がより影響力があって臨床ケアに情報を与えるでしょう。
私自身の臨床経験でも,多くの難治性のBP,特にRCでは,抗うつ薬の気分不安定効果と思われました。そのような患者は,しばしば数年にわたり抗うつ薬を,気分安定薬とともにあるいはなしで飲んでいました。彼らが,抗うつ薬なしに気分安定薬を投与されているのは稀でした。
もし抗うつ薬が気分不安定薬のように見えたら,適切なRCの気分安定薬のトライアルは,抗うつ薬なしのみで行なわれるべきでしょう。しばしば,難治性RCで,多数の気分安定薬が不成功に終わるようにみえる時,Schnecらの示唆するように,それは抗うつ薬の存在下で調べたせいかもしれません。
抗うつ薬を止めれば,同じ気分安定薬が有効になるかもしれないです。それで抗うつ薬を中止する事は,RC治療に不可欠のものでしょう。
ときどき,まれな場合に,特にうつ病相で高度に自殺企図のあるような患者では,短期間の抗うつ薬の治療は容認されるかもしれない。
しかし,RCの大部分の患者で,気分不安定薬は避けるべきです。
抗うつ薬による気分不安定化は急性の躁病性のスイッチとは区別すべきです。抗うつ薬に誘導された躁病またはスイッチは,短期間の現象で,人によっては抗うつ薬治療後2ヶ月以内に起こるものと定義しています
気分不安定化は長期の現象で,長期にわたってより自然経過で見られるより,多くの気分エピソードがあることを反映しています。抗うつ薬は長期の気分不安定化を,単期の躁病へのスイッチなしに起こすし,逆もそうです。
いくつかの薬剤は急性の躁病スイッチが低いのが知られ,特に気分安定薬を併用していると特にそうなのが知られてますが,STEP-BDは新世代の抗うつ薬でさえ長期の気分不安定化を引き起こしうるのを示唆したのでした。
まとめると、STEP-BDのほかの研究結果と同様、この研究はBPにおける抗うつ薬使用を棺おけ入りにして釘をたくさん打つものかもしれない。抗うつ薬より精神療法に目を向ける方がいいかもしれないです。
脚注
Dr. Ghaemi は GlaxoSmithKline and Pfizer;, AstraZeneca, Pfizer, Janssen, and Abbott Laboratories; Shire, から金をもらっています。でもこの論評とは関係ないそうです。
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