非定型抗精神病薬は気分安定薬になりうるか?

| | コメント(3) | トラックバック(0)

ころんだカモメで書いたように,臨床精神医学(アークメディア)7月号は気分安定薬が特集でした。
特集”気分安定薬の現状と課題” 2008年 37巻 7号

その中の次の記事の,解説をします。私の独断と偏見で書いているのできちんとした要約ではないけど,面白い問題点で自分でもいつも考えていた事でした。

非定型抗精神病薬は気分安定薬になりうるか?―気分安定薬の臨床の現状とその問題点について, 歴史的経緯と今後の展望を含め, 幅広い視点からの解説―
堤祐一郎 先生の総説

気分安定薬の定義として,急性躁病に効き,躁病相への予防効果,急性うつ病への効果と,鬱病への予防効果というのがあり,いわゆる2X2定義です。
しかしこの定義をかろうじて満たすのはリチウムだけです。
しかもリチウムと言えども,急性うつ病相への効果は不充分でした。
デパケン(VPA),テグレトールについては,急性うつ病への効果は不充分,鬱病相の再発予防も不充分でした。
ちなみに定型抗精神病薬の代表のセレネースは躁病相には効果があるが,うつ病相に効果になく,かえってうつ転し,躁病相への予防効果もないと言われ,錐体外路症状,認知機能障害,dysphoria症候群がありました。

非定型抗精神病薬(SGA)では,神経保護作用と神経新生促進作用が認められ,リチウム,デパケンと共通する作用と考えられています。(この作用は定型抗精神病薬にはないとされています)。
ジプレキサ:BDNF(脳由来神経栄養因子)の回復作用により細胞壊死を抑制します。神経前駆細胞の増殖作用により神経新生促進作用の可能性が示唆されています。
セロクエル:ストレスによるBDNF蛋白量の低下抑制作用,BDNFmRNAの増加作用を有する。神経前駆細胞,未成熟神経細胞の増殖作用などから神経保護作用・神経新生促進作用が示唆されています。
エビリファイ:アポトーシス抑制因子(Bcl-2)の発現量の増加や,リン酸化GSK-3βを増加させて,気分安定化作用を示す可能性が示唆されています。

ここで,神経保護作用と,神経新生促進作用が,リチウム,デパケン,テグレトール,非定型抗精神病薬に共通する作用としてあげられていたけど,これには多くの実験系があって,すべての系ですべての薬物が同等に働いている訳ではありません。

SGAの神経受容体親和性は強い抗セロトニン系作用とドパミン抑制があって,セロトニン・ドパミンアンタゴニスト(SDA)とも呼ばれます。エビリファイの場合は,D2および5HT1Aにパーシャルアゴニストとして働くのでドパミン・スタビライザーと呼びます。

これも分かりにくいまとめになったけど,元の論文では,ジプレキサ,セロクエル,エビリファイに加えて,SSRIに,5HT1A,-2A,-2C,-6セロトニン受容体阻害作用があることを指摘していました。また非定型3剤には,α1,D2,D3受容体の阻害作用も共通していました。

他にこの論文では双極性障害(BP)治療ガイドライン APA2009年改訂版(予定)が大胆にも紹介されていました。

2002年と2009年の差は,抗精神病薬がすべてSGAに変更された事です。とくに躁病相の中等症以下ではLi,VPAとエビリファイ/セロクエル/リスパダールが同等とされました。うつ病相ではセロクエルがLiやラモトリギンと同等の位置づけになりました。維持療法でもセロクエルが第一選択肢に加えられました。このようにセロクエル単剤はBPのいすれの急性期病相と維持療法に対してLiと同様に第一選択薬剤にあげられた最初の抗精神病薬になりました。
またジプレキサの証拠も多いが,体重増加や代謝性障害の併発の懸念から位置が下がりました。

躁病相/混合状態 重症      Li/VPA+SGA
            中等症以下  1st Li/VPA/エビリファイ/セロクエル/リスパダール
                     2nd ジプレキサ/テグレトール単一療法
うつ病相                1st Li/ラモトリギン最適化あるいはセロクエル単一療法
                     2nd ジプレキサ+プロザック
維持療法               1st 躁/うつ予防 Li/セロクエルあるいはラモトリギン
                     2nd 躁予防    エビリファイ
                     3rd 躁/うつ予防 ジプレキサ
                                 Li/VPA+セロクエル/ジプレキサ

いいかげんなまとめですので,ごめんなさい。
でも,もし非定型抗精神病薬(SGA)が真に気分安定薬作用があるならば単一療法がいろいろな病相で試せるという点で画期的でしょう。
しかし,私自身は,ジプレキサ(効かない)とセロクエル(眠くなるだけ)の双極性うつ病に対する作用は疑わしいと思っています。一方エビリファイには少しで短期間のうつ病相に対する効果はあるけど長く継続して効かない感じでした。(私の経験から)

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 非定型抗精神病薬は気分安定薬になりうるか?

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://bipolar.nami-kaze.org/MT/mt-tb.cgi/92

コメント(3)

リーマス :

ためになる記事を読ませていただきました。
現在、軽躁状態→軽鬱状態
(私が考えた言葉、この表現が一番自分の状態に適している)
で、リーマス300mg×3、テグレトール200mg×3、眠前にセロクエル25mg、アモバン7.5mg
服用しています。
セロクエル服用のため、なかなか朝起きることが出来ません。
また、セロクエルではテンションが上がってきません。
なので、落ちたときには抗鬱剤(パキシル>ジェイゾロフト)で上げていました。
医師にも相談していますが、躁状態で散財するよりは、
軽鬱状態で家でじっとしている(休職して2週間になります。うつで休職しました。)方がいいとのことで、ネットを見たり、テレビを見たりしています。
ラモトリギンの発売が待ち遠しいです。
今後もこのホームページの記事を読ませていただきます。

ラモトリギン(ラミクタール)は,2008年10月16日付で厚生労働省から製造販売承認を得ましたけど,12月5日現在販売はされていません。
しかも,今回の承認は抗てんかん薬としてです。
http://square.umin.ac.jp/tadafumi/lamotrigine.htm
双極性障害への承認までは、まだ長い道のりです。
双極性障害の治験は行なわれています。(加藤先生のページは間違っています)

http://m2fazami.blog26.fc2.com/blog-entry-293.html
に詳しい使用上の注意,情報を書きました。
スチーブンジョンソン症候群という重症の皮膚障害が来ます。保険外適応は注意して下さい。
・ バルプロ酸ナトリウム(デパケン)の併用
・ 承認用量(初回用量および漸増用量)を超えて投与された場合に発生しやすいようです。

ただし,デパケンとの併用は,てんかんで使われる正規の使用法なので使い方さえ,注意すれば禁忌ではありません。
非常に少量から増量していきます。
また発売後6ヶ月は副作用の集計をするので,保険外適応を一層しにくいでしょう。

ラミクタール錠(ラモトリギン)12/12/08 発売されました。 プレスリリース
http://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2008_07/P1000514.html

添付文書情報にも載りました。
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139009F1021_1_01/

http://m2fazami.blog26.fc2.com/blog-entry-304.html

コメントする