障害年金を取得するまで~体験を踏まえて
はじめに
わたしたちの病気は、どうしても労働能力や家事能力が低下しがちです。そのため収入が減り、生活が苦しくなり病状が悪化ということも招きかねません。 障害年金は、一定の受給資格要件を満たす人が障害を持ったことにより受け取ることが出来る当然の権利です。年金申請したいと思った時が、申請のチャンスです。申請には、気力も体力も要ります。自分ひとりで申請を行うのは容易なことではありません。家族・ケースワーカー・友人などあらゆる人に手伝ってもらうことも大事です。ここでは、実際に年金取得するまでの流れと、そこで知り得た情報をわたしを含め他の年金受給者の話を交え、皆さんにお話したいと思います。
申請する機関初診日の時点で加入していた年金保険が国民年金の方は、社会保険事務所または市区町村の年金課です。住んでいる地域によって違いますので、確認してください。市役所年金担当者の話では、全国的な傾向として、今後市町村役場の年金課から社会保険事務所に窓口が移行していくようです(2007.8現在) 初診日の年金保険が厚生年金の方は社会保険事務所です。 初診日の年金保険が共済年金の方は共済組合です。元の勤務先に尋ねてみてください。共済担当者がいると思います。
必要な書類
受診状況等証明書 診断書 病歴・就労状況等申立書 その他、住民票や年金振込先などの事務的な書類受診状況等証明書いわゆる「初診証明書」です。発病して初めて受診した病院で書いてもらいます。遠方であれば、証明書を書いてもらえるか?どうかまず電話をかけるか、手紙を出して確認してみましょう。証明書を郵送してくれる場合もあります。ただし本人と証明するものがないと郵送は難しいので、その場合は、現在通院中の病院のケースワーカーや精神保健福祉センターに相談してみましょう。初診の病院にもよりますが、郵送が無理と言われた場合は、遠方でも取りに行くしかありません。
診断書
診断書は医師が書くものですが、書きなれた医師もいれば、日頃から詳しくカルテに記載しない医者もいます。医師は、病状については治療上カルテに記載していますが、治療上必要な病状以外患者の生活能力や経済状態については案外知りません。障害年金とは、「障害者の症状の悪化により、日常的な生活の困難を極めたり、就業できない(あるいは継続的(充分)に働けない)時などの生活の土台を支えるため」のものです。それは結果的に療養生活を助け、症状の悪化を防ぐことになります。まず、自分で病歴・生活歴を書いて、医師に読んでもらいましょう。特に病院をいくつか転院された方にはお勧めです。 よりよい診断書を作成してもらうために~自分カルテ自分で書いた病歴・生活歴をここでは便宜上「自分カルテ」と呼ぶことにします。自分の書きやすい形で構いませんが、書く上で「医師の書く診断書」のチェック項目にあたる用語をポイントとしてあげていますから、参考にしてみてください。
病歴:病状で以下の「 」に当てはまる状態があったなら、必ず書いておきましょう。もちろん、わたしたち申請者は医療者ではありませんから、難しい専門用語を使う必要はありません。言葉の意味が分らない時は、主治医などに訊ねるかネットや本で調べてみましょう。
躁状態を表現するキーワード「おかしな行動(具体的に)」 「逸脱的な行為」 「多弁・多動」 「思考奔逸(考えがまとまらない、考えがころころ変わる)」 「易怒性・易刺激的(何でもないことで怒る・ちょっとした刺激で行動を起こしてしまう)」 「誇大的」 「誇大妄想」 「暴言・暴力」 「器物破損」 「気分高揚」
うつ状態を表現するキーワード 「思考・運動停止(何も考えられない・動けない)」 「刺激性・興奮」 「抑うつ気分」 「自殺企図」 「希死念慮(死にたい気持ち)」 「不眠」「過眠」 「不安」 「焦燥感」 「易疲労感(疲れやすい)」 「意欲・活動力の低下」 「自責感」安定~うつを表現するキーワード「ひきこもり」 「意欲・活動能力の低下」 「家事能力の低下」生活歴日常生活能力は、等級判定での大きなポイントになります。特に2級以上は「働けない」事が前提となっています。「病状によって働けない」、「無理をして働いているが極端に労働能力が低下している(休職経験やその休職期間を含む)」なら事実を書きましょう。もし退職した場合、記載上の問題ですが「自主的に退職」の時は「病気により退職に追い込まれた、退職せざるを得なかった」という表現がよいでしょう。また、それとなく上司に退職を促された事実、または「退職を促されたように感じた」事があれば「退職した」と書くより「退職勧告された」と書くほうがインパクトがあります。
女性の方に多いと思いますが、家で家事をされているまたはせざるを得ない環境にある場合(既婚・独身に拘わらず無職のケース)、これも「労働」です。家事労働が出来ないということは「外で働けない」ことと同じで、非常に深刻なことです。これは生活能力がひどく低下していることを現しています。家事労働は非常に複雑で重要な労働ですから、「家事が出来ない」ことはきちんと書いておきましょう。また、家事が出来ず、ヘルパーを利用している場合や、同居人及び近親者のお世話になっている場合は、書いておきましょう。それだけ生活能力が低下していることを医師にわかってもらうためです。 日常生活能力とは、仕事が出来るか出来ないかだけの問題ではありません。日常の生活の能力がどれだけ低下しているかが問題になってきます。下に判定基準を書いておきましたので、項目に沿って、自分の生活能力を書いてみましょう。「自分で食事が作れない」とか「お風呂に入れない」「浪費してしまう、買い物に行けない」「うつで通院が出来ない」「人とうまく付き合えない」「希死念慮が常に沸いている」「ODをしてしまった」「イライラして物を投げた・壊した」などの表現を使って、自分の日常生活について、自分に当てはまる事を書いておきましょう。 判定基準診断書には判定基準がありますから、それを参考に自分の状態を表現していくのも、一つの手かもしれません。自分の最悪な状態のときのことを思い出して、出来ていたのかどうか、書き出してみましょう。これはわざと等級をあげようと悪意を持って不正をしようとすることとは違います。
肝心なことは躁病相もうつ病相も一番状態が悪化したと症状を規準に、診断書を書いてもらうようにすることです。日頃から、主治医に対して、言葉(メモでもよい)ではっきりと働きかけ、コミュニケーシ、ョンを取ることが大切です。医師にとっては、訴えがない(または少ない)ことが、もっとも診断書が書きにくいようです。
日常生活能力の判定では、(1)適切な食事摂取、(2)身辺の清潔保持、(3)金銭管理と買い物、(4)通院と服薬、(5)他人との意思伝達及び対人関係、(6)身辺の安全保持及び危機対応の6項目が4段階で判定されます。各項目、a,判定「できる」b判定「自発的に出来るが援助が必要」c判定「自発的には出来ないが援助があればできる」d判定「できない」です。もちろん、他の記入箇所があるので、この判定だけによるものではありませんが、明暗を分けるかなり重要なポイントのようです。
日常生活の能力の程度の判定5段階評価ですが、(1)「精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる。」(2)「精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活上困難がある。」(3)「精神障害を認め、家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。」(4)「精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。」(5)「精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、ほとんどできないため、常時の介護が必要である」。です。(5)は最重度。 ここも、他の記入部分との兼ね合いもありますが、かなり重要な判定のポイントのようです。 家族歴家族が治療に協力的でなければ、治療がうまく進みません。しかし医師が知らない(患者が医者に告げていない、告げづらい)場合もあります。
「家族が病気に理解がない」「家族が病弱で介護が必要」など家族についても自分カルテに書いておきましょう。 経済状態経済状態については、よほどコミュニケーションが取れてないと、医師は知らないものです。しかし、障害を持った私たちがより病状を安定させるためには、お金はかかせません。年金受給の基本条件は精神障害を持つことで、患者本人が「働きたくても(充分に)働けない」ということにあります。一方で「年金生活の親の扶養」「夫(妻)の収入が少ない」「夫(妻)が給与を渡さない」「夫(妻)がギャンブルで借金」「夫(妻)の浪費が酷い」など、自分を取り巻く経済的に不安定あるいは苦しい環境に触れておくことは年金受給のために大切です。経済状況が厳しいというのは、判定のポイントですから、その状況(経済的に苦しいこと)をきちんと医師に知らせておく必要があります。 労働能力自分が「働ける状態でない」「働く能力がない」であれば、きちんと医師に告げておきましょう。そして医師に「働いてよいかどうか?」必ず確認しましょう。医師から仕事をとめられたら、後で述べる「申立書」にも同様に記しましょう。
では、発病から現在に至るまで、上記のことを踏まえて「自分カルテ」を書いてみましょう。繋がらない文章でもいいのです。箇条書きで充分です。診断書の内容が年金取得には、一番大きく左右しますから、ここは辛くてもエネルギーを使いましょう。家族や友人に聞き取り、代筆をしてもらうのも、よい方法だと思います。そして「自己カルテ」を医師に渡し、診断書の作成に役立ててもらいましょう。わたしたちの作業はここまで。後は医師が参考にしてくれることを願いましょう。医師の診断書が出来たら、必ず一部コピーをもらって保管しておきましょう。 わたしの場合*遡及請求(そきゅうせいきゅう)は、できませんでした。諸事情で転院を繰り返した上、障害認定日当時の主治医が引退しており、かつカルテ上に障害にあたる記載がなかったもので、引き継いだ医師より「診断書の作成は困難」と連絡があったのです。 病歴・就労状況等申立書この書類だけが、唯一自分で状態を書ける書類です。また調子が悪く自力では書けないときは、家族・ケースワーカー・友人に代筆してもらうこともできます(印鑑と本人との関係を書くことが必要)。「書ける状態ではない」と見せたいために、わざと簡単に書くのは得策ではありません。それはなぜか?このことについては後で述べます。
病歴・就労状況等申立書の内容
1. 病名: これは必ず医師の診断書と同じにしてください。
2. 発病したときの状態と発病から初診までの間の状態 発病日は「受診状況等証明書」と同じにしてください。症状については「受診状況証明書」、に書かれた内容と一致させる全くありません。医師に告げてない内容でも全く問題なく自分の状態がどうだったか書いて詳しく書いてください。特に「受診状況証明書」に書かれていないもので、受給の可否を左右すると思われる事柄は、自分で付け加える必要があります。
3. 初診時の医療機関の名称・所在 「受診状況等証明書」と同じにしてください。
4. 項目名 ここからが本番。初診から現在までの経過を年月順に記入してください。
通院期間・入院期間は必ず、医師の診断書と一致させてください。書類上は、(1)受診していた期間は、通院期間及び受診回数・入院期間・治療の経過・医師から指示された事項、転医・受診中止の理由などを記入。(2)受診していなかった期間は、その理由、自覚症状の程度、日常生活の状況などについて具体的に記入。となっていますが、受診していた期間でも自覚症状の程度や日常生活の状況は具体的に書きましょう。2の「発病したときの状態と発病から初診までの間の状態」の箇所で述べたように、医師に告げてないことでも、全くかまわないのです。医師が診察室では「うつ症状が軽い」と感じていても、患者は「受診がやっとで、家では寝たきり」「気持ちが沈んで泣いてばかりいる」かもしれません。「躁状態ではない」と判断されても、実は「買い物が増えて浪費している」「いつもより、おしゃべりになっている」かもしれません。どれだけ状態が悪いのかを具体的に自分の言葉で、書けるだけ書いていきましょう。 裏面 就労状況等関係ここでは、就労状況について書きます。 「障害認定日(初診日から1年6月目又は、それ以前に治った場合は治った日」と「現在(請求日頃)」の状況について記入します。 (1)就労していた場合 ア.通勤方法・時間。イ.出勤状況 ウ.どんな仕事をしていたか具体的に記入。エ.仕事中、仕事が終わったときの身体の調子 1)ア・イは事実をそのまま、職場からもらった資料などを参考に記入するだけです。 2)ウは、「病気休暇」を取っていたり、「状態が悪いのに無理をして働いていた」など、具体的に書きましょう。 3)エは、「頭が重く仕事がはかどらなかった」「勤務後は疲れて寝てばかりいた。」など。もし、労働困難な病状を同僚から言われたことがあれば、忘れずに書いておきましょう。 (2)就労していなかった場合 ア.仕事をしていなかった理由 (ア)~(オ)まで5つのうちから選択します。 (ア)体力に自信がなかったから (イ)医師から働くことを止められていたから (ウ)働く意欲がなかったから (エ)働きたかったが適切な職場がなかったから (オ)その他 理由 (イ)の「医師から働くことを止められていたから」がもっとも状態が重いと判断されます。もし「働けない状態」にあるなら、前にも述べたように医師にも「働けない」事をきちんと告げておき、医師の意見を確認しておきましょう。 イ.毎日どのように過ごしていたか (ア)~(オ)まで5つのうちから選択します。 (ア) 普通の日常生活ができる。 (イ) ほとんど家の中にいるが時々散歩にでる。 (ウ) 身のまわりのことはかろうじてできるが、一日中家にいる。 (エ) 身のまわりのことはかろうじてできるが、一日中寝ている。 (オ)「身のまわりのこともできず、常に他人の介助が必要で、一日中寝ている。」が最も重い状態です。 この項目は躁状態が想定されていないので、一日中寝ていなくても、「身のまわりのことができない」「常に他人の介助が必要」であれば(オ)を選択してよいと思います。 (3)日常生活に不便を感じていることを記入 躁状態・うつ状態の最悪の時のことを思い出して、具体的に書いていきましょう。
なぜ、詳しく書くほうがいいのか?それは、もし自分が認定された等級に不服がある場合、例えば「2級該当」だと思っていて「3級認定」場合ですが、不服があるとき申し立てをするには、この「病歴・就労等申立書」が重要視されるからなのです。 書類の提出 書類が揃ったら、加入保険それぞれの申請先に申請しましょう。なお、申請書類は必ずコピーをとっておいて手元に持っておきましょう。申請に行くことすら、大変な病状であれば、家族やケースワーカーに依頼しましょう。何でも自分ひとりでする必要はありません。わたしの場合は、最初にケースワーカーに委任状を書き、書類取り寄せから、申請まで全部代行してもらいました。費用は特にかかりませんでした。 遡及請求障害認定日、初診から1年半後、の診断書と現在の診断書の両方が障害にあたれば、過去五年分(それ以前の権利については時効で消滅するため)までに限りさかのぼり年金が支給されます。一気に何百万円も振り込まれることもあるわけです。これは実際に受理できたはずの障害年金です。申請が遅れたために後納されたという捉え方が妥当でしょう。
申請から認定まで
申請から認定までの期間には、はっきりとした規定はありません。わたしの場合は、4ヶ月かかりました。2ヶ月で申請が降りたという方もいます。結果が出るまで、落ち着きませんが、ここは辛抱して待つしかありません。 障害年金受給2ヵ月ごとの指定口座への振り込みとなります。 認定が降りたなら精神障害者保健福祉手帳を申請していない人は、申請しましょう。年金認定書が診断書代わりになり、同じ等級で手帳も交付されます。
障害年金を受給して
食費、医療費、保険料、ヘルパー費用、電話代、プロバイダ料、壊れた電化製品の買い替え、交通費、衣料品。これだけでも、わたしの働いていた時のわずかな貯金は、年々目減りする一方でした。働けず、家賃や光熱費、食費は、連れ合いにおんぶに抱っこ。後2年もすれば、一文無しになるところでした。身体的に調子が悪くても、我慢して受診しない日も続きました。経済的な理由で、必要な入院を早めに切り上げたこともあります。お金のかかる趣味は、断ち切るしかありませんでした。 障害年金を受給しだしてからは、違います。身体の具合が悪ければ、我慢せず、早めに受診・治療することができます。連れ合いへの負い目も減り、気分的に楽になりました。趣味にも衣料品にも、お金が使えるようになりました。なにより、症状が安定したことが一番です。 働けないわたしにとっては、年金は命の綱なのです。 最後にくどいようですが、年金申請に必要だった診断書や書類などは、全て原本かコピーをとって保管しておきましょう。万が一の「不服申し立て」や「年金の更新」時に必ず役に立ちますから。